【絆】土屋利紀の肖像
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土屋利紀の二男、毅明が本格的に馬に触れるのは、十四歳の十一月二十三日だ。それ以前にも時折、両親の利紀、多恵子と共に、青島の観光牧場のようなところで乗っていた。そういった固いの中での遊びではなく、囲いの外へ、つまり、外乗りをこなすには、訓練が必要だった。多恵子が言った。「綾町の乗馬クラブに、一緒について来て。五百円あげるから」毅明はこの目、初めて乗馬を習った。最初から障害を飛んだ。インストラクターは感心した。「初めてにしてはバランスがよい。運動神経が非常にいい」運動神経について土屋一家は折り紙っきだ。利紀の栗野町の少年時代、運動会には花形の家族リレーがあった。「走る前からトップは土屋家とわかっていました」同級生たちはこのように語っている。その家族リレーには母の美代も走った。美代はよく子どもたちに話していた。オリンピック82

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