主のいなくなった土屋利紀の自宅は、ひっそりとしてい一る九。八(昭和五十六)年に新築した三階建ての豪邸だけに、逆にひと気のなさが際立ってくる。一つ一つの部屋の扉を開けていく。「会長(利紀)がまだいるようで:・」管理をしている畦地康代は言った。どこからか不意に現れて陥る。その一部屋におびただしい馬の群がいる。絵画をはじめ、ベルトのバックルや栓抜き、ボールペン:・。すべて、馬がデザインされたものだ。「とにかく、馬のグッズが売られていると、即買いされていたようです」畦地の言葉を利紀の秘書だった出水典子は裏書きした。出水は即買い、衝動買いのやブレーキ役を利紀から頼まれていた。「たまに覗きに行くギャラリーで馬の絵画作品を見るやルパンに乗って『(競走馬購入に比べれば)安いもんだ!』と「ょう」と声を掛けて現れそうな錯覚に74
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