【絆】土屋利紀の肖像
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「栗野に帰って来い」父の勇満から言われた。土屋利紀は帰るには大きな病院を考えていた。栗野の町長に掛け合った。「五百坪の土地を寄付してくれ」町長は利紀の話が理解できなかった。利紀がなぜ、無償提供を申し出たのか。「大きな病院を開業すれば多くの患者が来てお金が町に落ち、病院で働く者も増える」地域振興策の一つとして話を持ちかけたのだが、無視された。短い期間、父の眼科を手伝っていたが、次のステップに進むには自ら開業するしかなかった。そこで、人口が多く、土地勘もあり、知人もいた高校時代を過ごした大口に移ることにした。しかし、開業するにあたって次の難問が待ち受けていた。資金だ。当時、大口には眼科診療所が一つだけあった。当然、利紀が進出すれば、患者の取り合いになる。医院聞はライバル、競争相手だ。利子が安い医療金融公庫からの借金を考えた。大口に開業第二章59 立志編

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