【絆】土屋利紀の肖像
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利紀の人生の中で、鍵になるエピソードを知るのは小中高、同級生の辻徹哉だ。大口高校の裏の崖に横穴があった。防空壕用の穴だが、戦後、ホlムレスが住んでいた。その男が「手相を見てやる」と利紀と辻に言った。利紀の手相を見て、男は断言した。「おまえは九十歳まで生きる」当時の男性の平均寿命は約六十一歳。九十歳H大長寿と同義であった。年若い利紀にとって不老長寿に近い感覚だった。辻はそのときの利紀の顔が忘れられない。「なにか、確信したような自信に満ちた表情でした。自分はなにを言われたかは覚えていませんが・:」ホlムレスの予言。利紀はこのとき、人生百年構想を頭の中に描いたのかもしれない。40

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