【絆】土屋利紀の肖像
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近くを流れる大淀川の川面を渡った風が、時折ヤマモモの葉を揺さぶる。このヤマモモは約七十キロ離れた「北薩」と呼ばれる鹿児島県・霧島山麓の栗野町(現・姶良郡湧水町)の「土屋眼科」の庭から移植されたものだ。利紀が宮崎進出のときに選んで持ってきた記念樹である。メモリアルなことが好きだった。利紀は心地よい風に吹かれて目を閉じる。その網膜に故郷・栗野の風景が映し出される。の若木と利紀少年が立っていた。その地が利紀と父、勇満が開業した「土屋眼科」。「慶明会」の原点だった。その庭にはヤマモモ20

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