【絆】土屋利紀の肖像
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ヤマモモは三人の愛情溢れる言葉に、うなずくように枝葉を小さく揺らした。〈そうだ。まだ、紀ちゃんの事業は途上でした。紀ちゃんは地上の楽園、たんだ〉ヤマモモの木は国富町の方角を見渡した。国富町には「さくら苑」「サンフローラ」「サングラン」「サンメリ1」など各施設が集中している。「けいめい記念病院」もある。「ドクターや職員、患者さん、一緒になって長生きするための施設にしたい」利紀はこう語っている。地域包括ケアシステムを完成させたかった。欧州に認知症患者たちだけの町があるように住まい、医療、介護、介護予防、生活支援を一体化した「高齢者たちのユートピア」を国富町に建設することを夢に描いていた。ヤマモモの木は思う。〈紀ちゃんは確かに慶明会のブランドだった。これからは慶明会全体がブランドにならなくてはいけない〉ここまで慶明会が発展できたのは利紀だけの力ではない。利紀の最初の「波動」によって全職員、全患者が共鳴、共振して、大きな波動になった。その波動を忘れない限り、慶明会は続いていくだろう。波動とは、言い換えれば「紳」である。一主な参考、引用文献}・「照らす1ここから明日へ」・「克己」(住吉昭信著・鉱脈社)・新聞各紙(MRT宮崎放送編・鉱脈社刊)ユートピアを作ろうとしてい172

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