このドア付き浴槽は一九九五年に特許申請をしている。当初は車椅子に乗ったまま入れる型もあり、当時としては珍しかった。主に施設用だったが、五年前に在宅用として改良することになった。その事業に呼ばれたのが有馬だった。有馬は都城大丸内のけて「アイトップ」に入り、利紀の特命で二年間、東京にしかなかった眼鏡専門学校に通った。「コンタクトレンズだけでなく、眼鏡も販売することになり、専門知識が必要ということで『行け』と言われました」利紀は実に多くのスタッフを各分野で学ばせている。人材育成のために金と時間を惜しみなく与えている。「三世代が使用できる浴槽を作れ、と言われました」ドア付きだと高齢者、子どもも安心して入ることができる。有馬は涙ぐみながら言った。「なんでできないのか、とよく叱られました。先生がいないところで『くそ爺』と言ったこともありましたが、今では本当に寂しいです」利紀が商品開発をしたのはドア付き浴槽だけではない。薬袋に点字を施した「ポッチタッチ」(一九九七年)。これは目の不自由な人が朝、昼、夜に飲む薬を触ることでわかる。また、携帯型の自動合焦拡大鏡「アイフアイン」は二OO二年にグッドデザイン賞を受賞した。弱視者の生活の活動範囲を広げる光学的補助具である。このほかにも独自の開発商品があり、利紀の企画、開発力を垣間見ることができる。「アイトップ」にいた。高校卒業後、就職試験を受160
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